た。
無論私はすぐに彼の家にかけつけた。
「今電話でうかがつたが、どうかしたのかい」
私は彼の部屋に通されると、すぐ、つまらなそうな顔をしてベッドに身を横たえている藤枝に声をかけた。
「うん、大したことはないんだがここをやられちやつてね」
こう云いながら彼は咽喉を指さしたが、成程、声が大変にかすれている。
「つまらん遠慮をしてひどい目にあつた。あのM・C・Cだよ。いつたい僕は君も知つてる通り、エジプト煙草を喫わないんだ。僕はいつも、エーアシップだのヴァージニヤンリーフの煙草ばかり喫つているので急に変つた煙草をやると必ずのどを悪くするんだ。以前にも一度こんな事があつたよ」
「じや、昨日秋川の処でエーアシップを女中にでも買わせればよかつたな」
「そうさ。それは知つていたんだが、暇をとるとかとらないとかいつている女中達に余計な用を云いつけて秋川家の人を困らすのもどうかと思つたので、あのエジプト煙草を、たてつづけに十本喫つちまつたんだ。つまり僕のいじきたな[#「いじきたな」に傍点]からおこつた事だから誰にも文句は云えないが、おかげで今朝からすつかり咽喉を腫らして熱があるんだ。大したことは
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