ますが、およみでしたか」
とひろ子の方をちよいとむきながらきいた。
「はあ」
「恐ろしい殺人犯人が書いてあるでしよう。確か、コンスタンス・ケントの事が書いてあつたと思うが……」
「ああ、あの少女の殺人鬼のことですか」
「そう。そうです、中々おそろしい女性がいますよ。上べは虫も殺さぬような顔をしていながらね。尤も、ここにいる小川君なんか、美人と見れば誰でも尊敬するたちですがね」
彼はこう云いながら私の方をからかうようにあごでさした。私は赤くならざるを得なかつた、それにしても一体藤枝は何のためにこんな変な事を、美しいひろ子の前でいい出したのだろう。
「ほんとでございますわ。外面如菩薩《げめんによぼさつ》内心如夜叉《ないしんによやしや》と申しますからね。きれいなやさしそうな女ほど恐ろしうございますわね。ほほほほ」
ひろ子は、美しい目をみはつて笑つた。
「ではまた、明日にもうかがいましよう。お父様が来てはいけないとおつしやれば仕方ありませんが」
「あら、そんな事ございませんのよ。父はただ、警察も探偵もたよりにならないと云うだけで決して先生方をお断りする気ではございませんの」
「じやまた明
前へ
次へ
全566ページ中276ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング