著しいコントラストを形作つているようですが……」
「そうです。女の方々で斯様なショックをうけておられるのですから、多少どうもヒステリーの気味はあります。ひろ子さんは、わりにしつかりしておられますけれども、やはり大変興奮しているようです。さだ子さんはその反対に大変陰鬱になつていますがやはり余程神経を悩ましていられるようです。令嬢の中では初江さんがまず今一番健康のようです。私はかなり前からこちらの方々を診ていますが、元来初江さんが一番身体もがつしりしていて丈夫そうです。しかし先生も云われた通り、こんな事件があればどんな家の者だつて通常の状態ではいられませんよ。ひろ子さんにせよ、さだ子さんにせよ、むしろちやんとしておられる方でしよう。――時に藤枝先生の方の犯人のお見込みは如何なのです」
「さあ、まあ、今の所全く判らないと申し上げるより外ありません。もつとも昨夜、一人怪しい男が捕まつた事はつかまりましたがね」
「昨夜の事件はともかく、十七日の夜のは多少私も関係しているので気になりますよ。何しろ私の処方した薬が昇汞になつていたんですからな」
 これから、木沢氏と藤枝はまだいろいろと語つて二十分程
前へ 次へ
全566ページ中274ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング