ないのですが、興奮の結果、あるいは自殺などという事が全くないとは云えません。私は昨夜おそくよばれて、余り眠れないからというので、抱水クロラールを作つたのです。大体、此のクロラール、ヒドラートという薬は余り感心出来ぬ睡眠薬なのですが、何分、今までヴェロナールだのヌマールだの大抵な薬を連続してのんでおられるので、中々他のものではきかぬのでね」
木沢氏は、弁解がましく語つた。
「成程、御主人の容態はそんななんですか」
藤枝は頻りにM・C・Cの煙をたてて暫く何か考えていたが、ふとまた口をひらいた。
「これはあるいは、御専門――多分内科でいらつしやると思いますが、それ以外にわたるかも知れませんけれど先生はこの秋川の家族のようすが少々変つているとお考えにはなりませんか」
「というと?」
「つまり何ですな。精神的方面でです」
「左様、おつしやる通り、私は精神病の方面は余りよく知らんですが、この御家族がやや、アブノルムな状態にあるという事は考えられますね。しかし……」
「しかし、それはこんな惨劇がつづいて起れば誰だつてそこの家族にノルマルな状態を期待する方が無理でしよう。それにしても令嬢方の様子は
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