うかおかけ遊ばして。只今木沢先生が見えますから……」
しばらくたつと、木沢医師がにこやかな顔をしてはいつて来た。
藤枝は十八日に木沢氏に会つて既に顔見知りの間柄になつているのだが、私はまだ改めて紹介して貰つた事がないので、一応ひろ子からひき合わせてもらつた。年の頃は卅七、八で、極くおだやかそうなお医者さんである。
「いろいろお骨折で大変です。御主人は少しはおちつかれましたか」
「ええ、今催眠薬のせいでずつと眠つておられます。大した事はないのですが、何分引きつづきの御不幸でショックを受けておられますから……」
「先生などの御立場から見ては、とても人には会わせられませんか」
「いや、そんな事はありませんが」
木沢氏は一寸黙つたがやがて云いにくそうに口を開いた。
「しかし、今はお会いになつても無駄だと思います。一言で云えば、ここの御主人は、医者――それも私以外の人には全く会いたくないと云つておられるのです。無論お嬢さん方は別ですが、現に、大した事はないのですけれども、看護婦でもよばれたら、とおすすめしたのでしたが、それも好まれぬらしいのですよ。ノイラステニーの極く烈しい状態ですな。フィ
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