伝だつた。
「Spricht sie Deutsch ?(おやあの人はドイツ語をしやべるのかしら)」
藤枝はちよつと驚いたように独り言を云つたがすぐその下の段に目をやつた。
そこには我国で発行された、文学、音楽、美術に関する書物が美しく並べられていて、この部屋のもち主の教養の程度を物語つている。
「わがヴァン・ダイン先生とドイル先生とはどこにいるのかね」
藤枝はしばらく本棚を見つめていたが、やがて、私を見ながら左手の方をさした。そこには、ヴァン・ダインの既刊の五冊の小説とドイルのシャーロック・ホームズ物が殆ど全部、それから、Wallace Runkcl, Rosenhayn, Hans Hyan,(後者三つはドイツ文)の小説、更に隣《とな》つて、Kingston Pearce 等の犯罪実話が並べられてあつた。
(私は、実は一生懸命になつてハンス・グロースの本を探した。これがあるといよいよ「グリーン・マーダー・ケース」に似て来るのだけれど、流石にそうした法律的の書物は一冊も発見出来なかつた)
われわれが本棚の前に立つて、M・C・Cをくゆらしている所へ、ひろ子が戻つて来た。
「ど
前へ
次へ
全566ページ中270ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング