見てずんずん行くとやはり左側に立派なドアがある。ここがひろ子の部屋と見える。
ひろ子の案内でわれわれ二人は美しい令嬢の部屋に通された。
「いや、素晴らしい結構なお部屋ですね」
藤枝がお世辞でなく思わずそういつた位、美人に似つかわしい美しい部屋であつた。
7
「では、ちよつとここでお待ち遊ばして……」
ひろ子はこういうと部屋を出たが、木沢医師を呼びに行つたのだろう。
藤枝と私は、椅子の傍らに立つた儘、部屋の中を見まわした。
壁には泰西名画の写真が二つかけられ、部屋の一方に寄せられてあるテーブルの上には、美しいカーネーションがその姿に相応しいかおりを室内に送つている。一方の壁によせて大きな書棚がおかれてあつた。
「マドモアゼル(令嬢)の愛読書があるぜ」
藤枝が指すので、ガラス越に本棚をのぞくと一番上の列に第一に目についたのは Richard《リヒヤルド》 Muther《ムーター》 の「絵画史」とそれに並ぶ L《エル》. Nohl《ノール》 それから Paul《パウル》[#「Paul」は底本では「Panl」] Bekker《ベッカー》 の有名な Beethoven
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