沢先生が今来ておいでになるのですが何でしたら、私の部屋に来てお話になりません? 今二階においでになるのですの」
女性の争いは執拗なものだ。ひろ子は、余程さだ子の言葉が気にさわつたと見え、藤枝と私を自分の部屋によんで、さだ子を除外しようというつもりと見える。
藤枝はそれに気がついたかどうか、判らぬが、すぐ快く承諾した。
「じや、お部屋にまいりましよう。ところで、甚だ失礼ですがあなたのお部屋には煙草がありますまいから、此のM・C・Cを十本ばかり頂戴して行きます」
「あのミス・ブランシュというのでよければ私の所にもございますわ。でもこれを私がもつてまいりましよう」
彼女はこう云うとM・C・Cの罐をとつてさつさと応接間の戸を開きながら、藤枝と私とを促した。
藤枝はえんりよなく戸の方に行つたが、しかしさだ子に適当な言葉をかけるのを忘れなかつた。
「では、木沢さんに会つて来ます。さだ子さん、御心配になるには及びませんよ。大丈夫です、安心して待つていらつしやい。伊達君はきつと帰されて来ますよ」
応接間を出て例の階段を登り廊下に出ると、左側が十八日に検事が家人を訊問した主人の書斎でそれを左に
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