う青年なんですがね。それが捕まつたので私も警察に行つて来たんです。私があつちにいるうちに伊達君も来られたようでしたよ」
「先生、伊達さんにお会いになりまして?」
「いや、会いませんでした」
「で、いかがなのでございましよう。伊達さんは捕まつてしまうのじやございませんかしら。昨夜、いろいろ警察の方にきかれていましたのでもうすんだことと存じておりましたのに」
「さあ、しかし、警察では、その早川辰吉の方をにらんでいるようすですから、伊達君の方は大丈夫でしよう。第一、罪のない者なら少しも心配する事はありませんよ」

      5

「でも、その早川という人が怪しいときまれば伊達さんが捕まる筈はないと思いますのですが……」
 ひろ子と同じような質問がここでまた彼女の口から出た。しかし、全くひろ子のが論理的であつたのに反し、さだ子の質問にはどうやら必死の熱情が感じられた。
「さあ、警察の方針については私も確かとしたことは云えないのですが、昨夜のような事件がおこつた場合、一応皆にきいてみる必要があるのでしよう。必ずしも伊達君が嫌疑をかけられているとは限らんですよ。そう御心配になる事はありますまい」
前へ 次へ
全566ページ中263ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング