やみにお父様を責めたつてだめですよ」
ひろ子はにこやかに微笑した。
「判りました。おつしやる通りにやつて見ます」
彼女は充分引き受けたという調子で、紅茶を一口ぐつとのんだが、急に藤枝を見ながら、
「ではやつぱり先生も! あの伊達さんを」
と云い出した。
「え! 何ですか」
「つまり早川とかいう男が犯人とは信じていらつしやらないのでしよう」
「どうしてですか」
「でももし早川が犯人だとすれば伊達さんのことなんかお調べになることはないのではございませんの。結局早川とかいう人以外に犯人があるとお考えになつていらつしやるのでしよう」
彼女はちよつと微笑を表わした。
「ひろ子さん。誤解してはいけません。早川の話と伊達君の話はまつたく別ですよ。ともかく伊達君の事をはつきりきいて下さい」
彼は口ばやにこう云い終つた時ドアがあいて、さだ子が憂わしげな顔をしながら、部屋の中にはいつて来た。
4
我国には昔から「雨に悩める海棠《かいどう》」という形容がある。この時のさだ子が私に与えた印象位、この言葉にしつくりあてはまつたようすを私は今まで見たことはない。
勿論、秋川一家の人々
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