眺めていたが、この時テーブルの上にもみくちやにおいてあつた紙片を手にとつて、おもむろにそれをひろげた。
それはさつき早川の供述中にあつた佐田やす子の紙つぶて[#「つぶて」に傍点]であろう。下手な鉛筆の走り書きで、今スグ行キマス ムコウノポストノソバデマツテイテ下サイ と記されてある。
早川辰吉のむせび泣きがやつとおさまりかけた頃藤枝は静かに早川に向つて語りはじめた。
「君にもう一つ参考の為にきいておきたい事があるんだがね。さつき君の話の中に佐田やす子がたつた一人大変親切な方があつて自分に同情してかばつてくれている[#「たつた一人大変親切な方があつて自分に同情してかばつてくれている」に傍点]、という言葉があつたな」
「はあ」
「君はその親切な人の名[#「親切な人の名」に傍点]をやす子から聞かなかつたかね」
早川はじつと藤枝をながめた。
警戒するような目つきでしばらく見ていたがやがて、
「いいえききませんでした」
とはつきり答えた。
彼からは、藤枝もやはり自分を死刑台に上らせようとする人間の一人だと見えているらしい。
「では、やす子が君に語つた時のようすで、その親切な方というの
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