やないか、と申し出しました。それまで彼女は、決して情夫なんかあつて逃げて来たのではない。これには深いわけがあることだとしきりと弁解しておりました。今度、僕が邸の塀の外で草笛をふいたらそれを合図に必ず出て来い、出て来ないとどんな目にあわすか判らないぞ、とこう申して仕方なく十七日の午後は別れました。その夜、塀外でしきりと合図を致しましたが、一向やす子は出てまいりませぬ。癪にさわつたので電話をかけて見ますと、いきなり外の女の声がしたので何も云わずに切つてしまいました。
 そのあくる日、朝から見張つていると、何事が起つたか、朝から警察の方々がしきりと秋川家に出入していられるようです。こりやどうしたのかなとふしぎに思いながらその日の夕刊を見るとあの始末です。これじやとても今日はやす子が出ては来まいと、十八日中はあきらめて、帰つてしまいました。
 十九日の朝早く、電話をかけますと、ちようど偶然やす子が出て来ました。今夜はあわねば殺してしまうぞと勿論これはおどかしで申したのですが、今夜は明日の葬式の為にとても出られぬと申します。じやあしたの夜、すなわち、昨夜です。二十日の夜合図をしたらきつと出て来い
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