を、乗合自動車の中で見かけたのです。私は歩いていたので、そのまま追つかけるわけにはまいりませんでしたが、それからというものは渋谷の方に居《きよ》をうつして毎日毎晩あの辺を見張つておりました。
偶然の機会から、渋谷の小さなバーで彼女らしい者がその近くのバーにいることをききましたので早速行つて見ますと、二、三日前にひまを取つたばかりの所でした。それは本月のはじめのことであります。
しかしこれまで判れば、あと探すことは余程楽になりました。私は彼女の兄弟ということで、そこの店でいろいろききますと、大分探り出すことが出来ましたので、更にやす子が頼みに行つたらしい桂庵を捜しますとちようど本月八日に、牛込の秋川という家に奉公に上つたということが判つたのです。どこをどう胡魔かしたのか、ちやんと姉という人が保証人になつておりますそうです、がそれは渋谷のバーに一緒にいた年上の女で、今は男と一緒になつて一軒ちやんと店をもつている人らしいのです。
私は、その日から今おります下宿に岡本一郎という偽名ではいり込んで、毎日秋川家の様子を見ておりました。勿論、はじめの考えでは、いきなり秋川邸に彼女を訪ねるつもり
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