となつた勝負は武蔵山と朝潮の一番で、立ち上つてから左四つになるまで、朝潮甚だしく優勢で、武蔵山は東二字口に寄りつけられ危く見えたが、これを残して左をさすと、朝潮の打つた例の強引の小手投げに乗じて、掬投げを打ち返し美事に武蔵山の勝となつたのである。
藤枝の頭の中には天竜の顔がおぼろげながらうつつて伊達と結びついているのだろう。
私はわざと何も云わず、やはり煙草をふかしていた。
自動車が警察署の前につくと、藤枝と私はただちに、高橋司法主任の部屋に通された。
「さき程はありがとう。早速小川君をつれてうかがいましたよ」
「いや大分手ごわいので刑事も閉口したらしいのですが、やつとさつき口を割るようになつたので、取り敢えずおしらせしたようなわけで」
「ありがとう。で、供述はピンと来ますかね」
「まあ、殺人の点は否認しておりますが、邸宅侵入は立派に認めています。この点は間違いはありません」
「ふうん、で、動機は窃盗ですか」
「いや。被疑者は佐田やす子の情夫ですよ。僕の方でも調べたんだがあの佐田やす子という女は今まで方々のバーやカフェーを渡り歩いた女ですな」
この時、給仕がわれわれの為に茶をも
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