つて来てくれたが、私は高橋警部の前におかれた訊問書の上書をちらと見ることができた。
そのはじめの行に何かむずかしい法律語が書いてあつたが次のところには、
住居不定 無職
岡本一郎事 早川辰吉
(当二十三年)
と記されている。
藤枝も茶に口をうるおしながらそれを認めたものと見え、
「その早川辰吉というのが、今日の被疑者ですね」
「そうですよ。さつきから暫く休ませてあるのですが、もう一度ここで改めて供述をきく所だつたのです」
高橋警部はそういうと卓上の呼鈴を押した。
やがてドアがあいて、制服の巡査がはいつて来ると、警部は何か小声でささやいていたが、巡査はすぐ立ち去つた。
二、三分程たつと、さきの巡査が一人の青年をさきにたてて部屋にはいつて来た。
これが早川辰吉という男であろう。
2
私はその青年を見て少々驚いたのである。
昨夜あの秋川邸に侵入した上、二人の人間を殺したのじやないかという恐ろしい嫌疑のかかつている男のことだから、しかもその上、刑事を相当手こずらしたのだという以上、余程|獰猛《どうもう》な青年が現れ
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