されても人から怪しまれぬ条件をもつている人間と見るより外はないな」
「しかしあの時駿三もひろ子もさだ子も初江も皆アリバイをもつているぜ」
「しかし共犯者という者があるからな」
私はこの時伊達正男のことを思い出して一種の戦慄が身体を通つて行くような気がした。
「少くとも直接手を下したのは、家庭の者ではない。……とするとまず伊達だな」
「そうだ、伊達なら今僕が云つた条件にかなうことはかなうよ」
「するとその共犯者はさだ子ということになるね、無論」
「小川君、君はものの表ばかり見ているからいかん。成程、かりに伊達を犯人だとすればさだ子が当然共犯者だということになる。しかしそれは表向きの話だぜ。伊達とさだ子は婚約者だ。しかし君は彼ら二人の恋人がしたしく抱擁をする所でも見たことがあるのかい。ねえ、婚約者には違いない。しかし愛情の点は誰も見ていないぜ。否、かりにある程度まで愛情があつても、もし伊達が犯人だとすればそんな男は誰とでも妥協し得る筈だ。ことに秋川家のようなへんな家の者ならね。彼はあるいはひろ子とひそかに妥協しているかも知れない。初江と通じていないとは限らぬ。否、あのおやじとどんな妥協を
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