しているか判つたものではない。この中でひろ子かさだ子と妥協しているということは最も考え得べきだ」

      10[#「10」は縦中横]

「ねえ君。今回の犯罪によつて一番利益を得たのは誰だい。十七日の殺人事件によつて一見利益を得たと思われるのはさだ子及び伊達だ。然るに昨夜の殺人事件によつて利益を得たのは誰だろう。佐田やす子の死によつて利益を得たのはさきにも云つた通り犯人Xだ。しかし駿太郎の死は誰に得をさせたか。考えて見給え。駿太郎は秋川家の法定家督相続人だぜ。それがなくなつて女の姉妹だけが三人残つた。そうすれば長女がまず一番得をするわけじやないか」
「じや君はひろ子が怪しいと云うのか」
「うん、怪しいと云えば皆怪しい。そうだ、秋川一家の人々悉く怪しむべしと云いたいね」
「犯人が全く秋川家の外にあるとすれば無論別だ。僕は十七日の事件の後でここで君にまさかこの事件がグリーン一家と同じことになるのじやあるまいと云つた。しかしこの言葉は取り消さなければならないかも知れぬ」
「ところでまず第一回の事件すなわち四月十七日の事件だ。嫌疑から全く遠ざけていいのは第一に駿太郎だ。次に初江だ。この二人
前へ 次へ
全566ページ中218ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング