いかい――じや例をあげて説明しよう。今かりに秋川家のおやじ[#「おやじ」に傍点]が駿太郎の死体の側に立つている所を、偶然僕に発見されたとする。その時彼が『先生、大変です。へんな声がきこえたので来て見るとこの有様です』と云つて僕にすがりついたとして見給え。僕はただちに彼を疑い得るだろうか。彼にとつて万事休矣だろうか。そうじやあるまい。あの家のおやじ[#「おやじ」に傍点]が自分の庭を歩くのを怪しむわけにはいかないからな。だからかりに駿三が駿太郎を殺すとすれば危険は甚だ少いわけである。これと同じ理由で、ひろ子かさだ子が、やす子の死体の側に立つている所を、誰か女中――例えばあのお清[#「お清」に傍点]という女に発見されたとしよう。『大変よ、清や。大変よ、やす子が……』と云つてウーンと後にのけぞつて目でもまわして見給え、誰がひろ子やさだ子を疑うだろう」
「成程、では君は、今度の殺人犯人はきつと家の中の奴だと思うのだね」
「いよいよグリーン殺人事件だ。あの時庭にいた犯人は家の中の人々すなわち家族の一人かまたは、やす子や駿太郎に甚だ親しい人間と思うのが至当だろうね、つまり今云つたように殺人直後に発見
前へ 次へ
全566ページ中216ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング