そうなら、キャーとかワーッとかいう筈だからね」
「とも角レコードをかけつ放しにしてとび出したのだから余程いそいでいたと見える」
「ところがそれ程いそいでいた駿太郎が、ちやんとドアをしめて出て行つたのはどういうわけだろう。君はたしかあそこのドアがチヤンとしまつていたと云うが……」
「そうだ。たしかに……」
「こうは考えられないかね。駿太郎はわざとレコードをかけ放してドアをしめて出たのだと」
「というと」
 私はちよつと判らないのでこうきいて見た。
「つまり彼は、実は自分があの部屋にはいないのに外からちやんと中にいると思われるようにしたのじやないかしら」
「成程」
「次に犯人の活躍ぶりを一応考えて見よう。さきに云つた事情で駿太郎の犯人――恐らくはやす子の犯人はあの庭の木立の中で電光の如くに二人をやつつけたのだ。いいかい。これが人里はなれた一軒家でやつたのではないよ。うちの中にはわれわれはじめ多くの人がいて、いつ偶然のチヤンスから庭に出ないとも限らぬ状態だつたのだ。とすると、犯人は実に短時間の間、身を非常に危険な状態においていたことになる。これは実に彼としては死物狂いの、デスペレートな襲撃と
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