の時分、スリッパのまま庭に出た人間が一人あるのだ」
 私はこの時暫く考えて見た。藤枝、私、警部はいずれも玄関から靴で出、ひろ子は下駄で出ている。ただ林田一人は急をきいて二階から下り、靴をはく間もなくそのままあのガラス戸の入口からスリッパでかけ出して来たのだつた。
「うん、林田がスリッパをはいていたよ」
「いや、それ以外にもう一人あるということさ。林田がスリッパをはいて出ていたことはよく判つている。然し彼はあれからまたガラス戸の入口から上つて行つた筈だぜ。ところが君、昨夜、裏口から上つた時僕は一足の土のついたスリッパを発見したのだ。しかも偶然に!」
 私は昨夜のあの時の事を思い出した。
「われわれは一体このスリッパは誰によつてはかれたか、しかしスリッパの主は何のために外に出たかを考える必要がある」
「え……それから駿太郎は?」
「さ、それさ。駿太郎が部屋からとび出したのは決して暴力を用いられたのではないということを君も了解出来るだろうね。少くとも彼は自己の意思で部屋をとび出したのだ。しかも非常にあわててね」
「何か見たのかしら」
「見たとすれば、それは決して恐ろしい光景じやあるまい。もし
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