まく行つたがずいぶんきわどい仕事だつたよ。
 素人目には派手で、素晴らしく見えるかも知れない。しかしあの堂々たる序曲と第一楽章を作つた作者にしては決して誇るべからざる第二楽章ができ上つてしまつたのだ。
 テンポの緩やかな長いイントロダクション、続いて湖水の表のような冷静な第一楽章、アンダンテ、しかして作者はこの章と第二楽章との間に少くとも十二日間という休符を挿入するつもりだつた。ところが予期せざる事情の為に第二楽章は意外に早く、しかもプレストで行われた。秋川一家というテーマの上に組み立てられたこの殺人シンフォニーはかくして第一、第二の楽章がアンダンテとプレストに作られ偶然にもシンフォニーの形式で弾奏されはじめたのだ。はたして第三楽章がつづいて演ぜられるだろうか。……そうだ。ことによると、第三楽章がまた意外に早く来はしないかな。ぐずぐずしてはおられん」
 彼はこういうと、腕時計にチラリと目をやつた。
「そうあわてる必要もあるまい。しかし、気がせくよ」
「そんなに早急なのかい」
「うん、この殺人芸術家はシンフォニーの第二楽章を不用意に開始した。彼如何に天才なればとて、必ずや何か手ぬかりを残
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