かがいますんですか」
「ええ、ちよいちよい見えますよ、この頃の若いお嬢さん達は皆しつかりしておいでで、中々立派な問題をもち込んでおいでになります。もつとも若いお嬢さんがたが見えるのは、よくよくの事で極めて秘密の要件が多いのですが」
彼はこういうと、シガレットに火をつけた。
秘密の用件をひつさげて、この探偵の前にあらわれたのは自分がはじめてではない、という確信が秋川ひろ子をして大へんにくつろがせたらしい。
「では、あの今朝、手紙をさし上げましたことにつきまして申し上げさせて頂きます」
ひろ子の話
1
秋川嬢は、さすがに、もういちど自ら堅く決心したらしくこう云い出した。
「どうか、御遠慮なく。ただあらかじめ申し上げておきますが、私のところにおいでになる以上、よくよくの事情がお有りのことと思います。従つて無論その事は重大な秘密に違いありません。ここにおいでになつていることすら、既に秘密に属するでしよう。けれど一旦、私を信じておいでになつた以上、どうか何事もかくさず、嘘を云わず、はつきりと云つて頂きたい。これはあらかじめ、切にお願い申しておきます」
「無論でござい
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