う所だ。だから、第二の犯罪も第一と同じ色彩をもつていなければならない。すなわち、あのように完全に、あのように堂々と行われるべきである」
彼はプカリとシガーの煙をはいた。
「くり返していう。堂々たるあの序曲。これは極めて静かに秋川一家にひたひたと波の如くよせて来た。それがすむと十七日のあの惨劇だ。これは完全だけれども極めて陰気に、しかもテンポは緩やかに行われた。……僕は徳子の死に方を云つてるのじやないぜ。犯罪の性質だよ。実によく考え、よく落着き、冷静にことが運ばれている。音楽の言葉で云えばこの第一楽章は andante か adagio である。
しかして、徳子が頭痛でやす子が薬を取りに行つたというそのチャンスの掴み方が実におちついている。そこで僕はこの犯人はおそらく、予告の如く五月一日に同じ組立の上に第二楽章を演奏すると思つていたんだ。不意に昨夜おこつて僕はいささか驚いたのだよ。五月一日という約束を破つてなぜ犯人は四月二十日をえらんだのだろう」
「君は殺人犯人から紳士の約束を期待するのかい」
「必ずしも然らずだ、が、この犯人のような奴はきつと約束を守るものだよ。今までのやり方を考え
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