利益を得る人を疑えということがあるからな」
「じや結局、徳子の犯人もやす子の犯人も、駿太郎のそれも君は皆同一だというのかい」
「明らかに断言はせん。しかし一応そう考えるべきだと思う。ただ、今云つたように、何も知らぬ草笛氏が偶然に徳子の事件の証人を失つてしまつたと考える方法もあるが。少くも徳子、駿太郎は同一人の手でやられている」
彼はこう云うと、ふと立ち上つて窓の外を見ていたが、傍のシガー入の箱を取り出して私にもすすめ、自分も一本ぬき出して火を点じた。エーアシップの煙の中に、香高いシガーの紫煙が立ち昇りはじめた。
「時に話は違うが、君は犯罪にもまた人の個性があらわれるということを知つているかね。つまりAという人間のやつた犯罪をBという犯人がやれば、決してAのやつたと同じ犯罪が出来るものではない、ということだ。すなわちいいかえれば心理学的に犯罪のやり方特色を見るということだ」
「フィロ・ヴァンス先生がそんなことをやはり云つてるね」
「僕はフィロ・ヴァンス探偵の云う程、ああすべてを心理学的に見るということはどうかと思うが、少くとも今度の二つの事件をそういう角度から観察するのは必要だと思うよ
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