た後に残つたことは、真に起つた事実と考えなけりやならん』とね」
「じや君は犯人二人説をとるのかい」
「ところが簡単にそうはいかない。いいかい、今云つたようなわけで駿太郎なりやす子が他の一方の殺人の場に居合わしたとはどうして考えられぬ場合だ。しかして駿太郎は一体何者かといえば、秋川家にとつて最も大切な息子だ。法定家督相続人である。この人間を殺すということは秋川家に怨みをもつている人の最も望ましきことと云わなければならない。だから駿太郎を殺した人間は徳子を殺した人間と同一人だと思うのが正しくはないかね。更に加うるに僕がさつき云つた一から七までの状況や事実を考えに入れれば、秋川徳子の犯人すなわち秋川駿太郎の犯人と考えていいと思うよ」
 彼はこう云つて紅茶をガブリとのんだ。
「で、やす子の方は……草笛の……」
「うん、君はしきりに草笛氏のことを云つてるが無論これは重大な人間だろう。しかし、君は佐田やす子を独立して考えすぎている。そりやあの位の女だから恋人もあろうし情夫もあるだろうよ。けれど君、やす子が秋川家における関係をもう一度充分に考えてもらいたいね」
「関係とは」
「つまり、第一回の殺人事
前へ 次へ
全566ページ中202ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング