も一つの考え方だ。これが正しいとすれば今度の事件の犯人は第一回の犯人と全く関係なく佐田やす子に恨みのあつた者の仕業だということになる。ただしこれが為には、少くとも駿太郎が唖だという仮定が必要だね」
「唖?」
「そうだ。だつて彼はたとえ少年とは云え十五才の男の子だぜ。やす子の殺されたのを見て少くともキャーとかワーッとか云いそうなものだが、あの時、誰もあの少年の叫び声をきかなかつたじやないか」
「成程、すると僕の考え方は、まつたく駄目かな」
「いやそうとは云えん、少くともあの塀からはいつた奴のあることはたしかだ。僕とてもあの足跡を、犯人がわざわざつけたトリックだとは思わない」
「うん判つた。藤枝君、じや君はこう考えるのかね。やす子を殺した犯人と駿太郎を殺した犯人とはまつたく別だとね」
「そういう考え方もある。すなわちやす子の犯人は今君が云つたようにしてはいつて来てそうして彼女を殺した。と丁度同じ頃、庭の他の隅で駿太郎が誰かにやられた、というテオリー。めつたにありそうもない場合だが不可能とは云えない。シャーロック・ホームズ曰く『全くありそうもないことでも不可能な事柄を全部ある事実からひき去つ
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