けトーストを食うとしようか」
 藤枝は、トーストを片手に取りながら、ミルクをやけにたくさん紅茶に入れると、むしやむしや遠慮なく朝めしをやり出した。
「どうも朝早く起きるとすぐは食慾がないんでね」
 彼はこんな事を云いながら中々重大問題に触れて来ない。
 やつと朝めしが終ると口をぬぐつて彼は云い出した。
「さて、いよいよ難問題を考えるとしようか」

      3

「四月十七日の夜半、秋川徳子が毒殺された。四月二十日の午後八時四十分頃に同家の息子、たつた一人の男子駿太郎少年と雇人の佐田やす子が庭で惨殺された。そこでこれらの三人は一体同一犯人にやられたのだろうかどうだろう」
「判らないね」
「判らない? そりやまあ僕だつて判然としたことはいいかねる。しかしここにこういう事実を加えて見ようじやないか。秋川という一家の主人に昨年の夏頃から何者とも知れぬ奴が脅迫状をよこす。それが為に主人は神経衰弱になつて一さいの公の仕事から手をひいた。最近ではますます度が強くなつて自分のみでなく家族の人々にも警戒させる。これが第一。ところがこの秋川一家が普通の家庭じやない。何だかしらぬが複雑極まる家である。ま
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