はさすがに彼だよ。ただ気の毒な事に丁度あの時彼は二階にいて、あの音楽を自分では聞かなかつたんだね。それで、恥を忍んで僕にきいたわけだろう。僕はきいたけれどもどこまでだつたかよくおぼえていないと答えてやつた。たとえ同盟はしても秘中の秘だけはちよつと云いにくいやね。それに先生だつて僕に大分かくしている所があるらしいからな」
「へえ、あれへ気がつくとはやつぱり林田先生だけある」
「いやもつと素早い事があるんだ。昨夜あのレコードを僕がいじつたろうと来た。どうして判つたつて聞いたら、彼もあのレコードに目をつけたと見えてあのレコードを秋川家の者に云つて当局に調べて貰つたそうだ。ところでレコードからは、犯人の指紋のかわりに、駿太郎の指紋とあと二人の指紋がとれたという事だ。詳しくきいて見るとそれがどうも林田と、斯くいう小生のものだつたらしいんだね。お笑い草だよ。あんなトリックをする犯人が、御丁寧に指紋なんか残してゆくわけがないじやないか。あはははは」
 私も一緒になつて笑つている所へ、先に命じてあつたと見えて、給仕が紅茶とトーストを二人分だけもつて来た。
「僕あ、めしはすんだよ」
「そうかい、じや僕だ
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