、ただちにタイプライターを打つておどかし、つづいて例の怪しい電話となつたんさ。何も不思議はありやしないよ」
「そうか、そんなことだつたのか」
「然しね、林田の奴、いちいち僕に一歩ずつ先へ廻りやがる。今しがたちよつと前に泉ガレーヂへカイゼル髯の男が来てやつぱり十七日のひろ子の行動をきいて行つたそうだ。驚くべき腕だよ。ひろ子が来た事もすぐ判つたろう。もつともお互様でね、あの日、午後に秋川駿三が、林田の家に二十分程行つていた事が判つたよ。駿三はひろ子のようにトリックを用いなかつたからすぐ知れた」
こう云つて彼は腕時計を見た。
「おやもう十一時半だね。冷たいものをのむ所はもうこの辺にはないな。どうだい君は大分近頃この辺で発展なんだろう。どこか大きなバーへつれてゆけよ」
藤枝がバーに連れて行けというのは余程不思議なことである。酒を一滴も呑めない彼は平生バーへは誰か呑む人が引張らねば行つたことがないのである。
しかし、酒の多少のめる私はあえてこれを拒む気にはならなかつた。
すぐ側のサロン、エネチヤという家にはいると早くも私は知り合いの女給たちに囲まれてしまつた。
藤枝はと見ると、オレンヂ
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