れどこういつた風の令嬢が乗つたと云うのだ。もつともここの前までは来ず向うの角で乗り捨てたそうだがね」
「それにしても、溜池で車が止つた時手前にもガレーヂがあつたろう。どうしてすぐ敷島ガレーヂが判つたい」
「そりやこうさ。あの位の女性がトリックで人をまく時人につけられぬ為に車にのる時は、目的の地点を決して乗りすごさず得てして少し手前で止るものなんだよ。見給え、僕の処へ来た時だつてわざと乗り越さずに手前で下りている。然しこんな事を調べるのが目的じやなかつたのだ、さつき泉ガレーヂできくとあの日、さつきの運転手がひろ子を送つて帰つて来た途端、秋川家からと云つて電話がかかりどこまでひろ子を送つたか、ときいて来たので彼は何げなくほんとの答をした。すると暫くしてから今の赤坂の敷島ガレーヂに今度は何者とも云わず、電話がかかつてひろ子のらしい形容を一応してその行先をきいたというんだ。もつともこんどの運転手はここの名は知らなかつたがともかくこの附近で止つた事を云つたそうだ。ところではじめ泉ガレーヂへかかつた時は男の声で敷島ガレーヂにかけたのは女の声だつたそうだぜ。曲者はこうやつてひろ子の足取りを研究した上
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