審判事と検事が現場に来るのを待つばかりである。
「恐らく今日は誰が来たとてこれ以上のことは判るまいからそろそろ失礼しようじやないか」
 藤枝は腕時計を見ながら私をうながした。
 そこで私もただちにこれに同意して、一同に暇をつげて玄関に出た。ひろ子が送つて来てくれた。
「そうそう、裏から上つたのだつけな、靴はあつちだよ」
 藤枝がくるりと向きをかえたので私もああそうだと思い返して彼のあとについた。
「おや、おはき物はあつちですの、どうぞここでお待ち下すつて、今すぐ私が取つてまいりますわ」
 私達がとめるのをかまわずひろ子がいそいで廊下を走つて行つた。
 藤枝はさつきのピヤノの部屋の前まで歩いて行つた。
「君、ちよつと聞きたいが、さつき君がここへ駿太郎を探しに来た時にドアはちやんとしまつていたかい」
「うん、何でもノックすると同時にあけたと思うから、そうだ、たしかにしまつてたわけだよ」
「じやちよつとはいつて見よう」
 彼は私にさき立つて部屋にはいつた。
「ところで、小川。僕はここでわれわれが昔音楽青年だつた頃のことを思い出して見ようとおもうのだがね」
 不意に藤枝はこんな妙なことを云い出
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