ながら一生懸命に前をにらみながらかまわず二、三歩闇の方に進んだ。
その時、さつきのピヤノの部屋に降りているガラス戸の所にひろ子の姿が現れた。
「ひろ子! 早く! 私の部屋から懐中電燈をもつて来てくれ!」
駿三がどなつた。ひろ子はすぐに姿を消した。
惨死体
1
ひろ子が姿を消してからまた現れるまで(それは実に二分もかからぬ間であつたが)藤枝は、一年も十年も待つていなければならぬような顔をしていた。平生に似ず異常に緊張した目つきはただならぬ不安を示している。
警部も待ちかねたと見えて飛鳥の如くに走つて行つて今ひろ子が姿を表わした入口までゆきついた。
ほどなくひろ子が下りて来ると、警部はもぎとるように懐中電燈をとつて戻つて来た。
「さ、何でもいい、南の方、奥のほうへ行つて見るんだ。あの森みたいになつている所、あつちへ……」
藤枝は夢中になつて先へ歩き出した。
そこで私は一応この家と庭の位置をはつきり記しておく心要を感じる、でないとこれから私の記するところが読者にはつきりしないかも知れないから。
ここに表わしたのは私がほんの心覚えにノートにとつておいたも
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