玄関を出てすぐ左に折れ、今いた応接間の窓の下を通ると木戸がある。これをあけると庭である。
藤枝も警部も私も、木戸をあけた途端、はたと当惑せざるを得なかつた。というのはここから左手にさつきのピヤノの部屋の中がすぐ見えるのだが反対に右側すなわち庭の方は、文字通り真暗で一体どこをどう行くとどこに出るのだかさつぱり判らない。
(あれだけ用心していた筈の駿三がこんな広い庭、しかも、奥には鬱蒼たる森をひかえた庭に一つも電燈をおかないとはどうしてだろう。後できくと駿三も無論ここに気がついていたのだそうだが、種々な説があつて、暗い方が安全だという人もあり、明るいほうが安全だという人もあつて結局彼は暗くしておくことにきめたそうだ。いざという場合自分が闇にまぎれて避難する気だつたのだろうか。ともかくこの事件の結果から考えると家の周囲に燈がついている方が危険が少いに違いないと私は思つている)
「こいつはしまつた。こんなに暗いとは知らなかつた。誰か懐中電燈を……」
藤枝がこう云つた時すぐ後から駿三が追つて来た。
「懐中電燈? 私の部屋にあります」
「秋川さん、すぐ、すぐ取つて来て下さい」
藤枝はこういい
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