ィーを送り出したのを耳にした。極めて小さなピヤノの音であるがまさしくそれはショパンの葬送行進曲の最初の部分である。
「私はまず第一にあなたが何故脅迫状を受けてしかもそれをかくしているのかはつきり承りたい。第二に伊達正男という人物……」
「ありや決して怪しい者じやありませんよ」
「そりやそうでしようが……私はあの青年とあなた御自身との関係が承りたいのです」
 秋川駿三はこの時、この言葉をきいて愕然としたようだつたが、何も答えず黙つて藤枝の顔を見返した。
 藤枝も何も云わぬ。この時ちよつとした静寂がこの部屋をおおつた。レコードの音は、一層はつきりと伝つて来る。
「おいひろ子! 誰だ。こんな時にあんな音をさせるのは」
 突然駿三がひろ子にきく。
「駿ちやんよ。だつてどうしてもやると云つてきかないのですもの」
「駄目だよ。早くやめさせて来い。そして駿太郎をここへよんでおいで。ほんとに仕様のない奴だ」
 彼はほんとに怒つたのか、ただしは藤枝の詰問を一時でものがれるために怒つたふりをしたのだか、ともかくひろ子に烈しく云つたのであつた。
 大切な質問の所に来ているのでひろ子もこの場を去りにくいらしく
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