所から、伊達正男、さだ子、佐田やす子の三人に特に目をつけたらしく、その命を受けた高橋警部はこの三人に任意出頭の形をとつて警察に出頭させ、しきりと取り調べたのであつたが、何ら確証を掴まず、ことに佐田やす子にはかなり烈しく当つて見たのだがやはり、これという所が判らず、右に述べた通り、一人の被疑者も拘引されずに二十日となつたのである。
 ただこの時分は新聞で例の過失死事件を報道した為、世人も怪まず、警察及び探偵に対する非難は少しもおこらなかつた。
 さて、さきに云つた通り四月二十日の午後、質素な葬儀が行われた。
 流石に永年実業界に活動した主人の力で大分多数の人々の顔が見えた。藤枝と私は共に式に列したが、やがて式が終ると、家族及び親戚の二、三が棺と共に埋葬についてゆくというので、われわれは一旦帰ることにした。
 林田もやはり帰つたようであつた。
 私は自宅に戻り、窮窟なフロックコートを軽快な背広にかえるとすぐ藤枝の事務所に行つたが、ちようどそれは夕方四時すぎであつた。
「これからまた行つて見よう、いよいよ肝心なところへ来たぜ。しかしまだ家族も帰つていないかも知れないから、暗くなつてから出かけ
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