断ずる為にはわれわれはある一つの勝手な仮定を前提としてしまつていることを忘れてはいけないぜ」

      8

 彼はそういうと立つてまた机の所に行き、別な紙片をとつて私の前に腰かけた。
「ところで昨夜の事件だが、これに又いろいろ妙な所がある。秋川一家の人達の様子なのだが、君は気がついたろうが、なんとなく僕はあの家庭が気にいらないね。又『グリーン家の事件』の話になるが、あの小説では探偵がグリーン家にはいるとすぐなんとなく冷たい感じがしたということになつている。我が秋川一家はまさかそうではない。これはつまり小説と事実との相違だけれども、しかし秋川家も何か起りそうな感じの家庭だよ。
 次女さだ子に婚約者があつて長女ひろ子にそれがないというのは必ずしも異例とは云えないけれ共、さだ子の婚約者たる伊達という男ね。一体あの男と秋川家との関係を君はどう思う? 次に最も注目すべきは、結婚と共にさだ子に秋川家の財産の三分の一がゆく、すなわち、名義はさだ子のものでも常識では伊達という家にこの財産がゆくという事実だ。僕の知つている所では、秋川駿三には四人の子がある。その次女に全財産の三分の一がゆくんだぜ。
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