しかして之は主人駿三の意見であつて、夫人徳子はこれに烈しく反対した。結局伊達をよんで婚約すら取り消させようとしたのだ。この点は非常に重大だよ。これから察すると秋川家では、さだ子の結婚問題に関して、主人と妻が全く反対の立場に立つて今日まで来たらしい。しかして長女ひろ子は」
「ひろ子はどう思つていたのだろう」
「さつきの彼女の供述ぶりによつて君には察しがついたろう、彼女が父母いずれの意見に賛成なのかということは」
 私は藤枝からこう云われて多少思い当る節があつたのである。
「ねえ君、話がちよつとそれるが、君はさだ子の顔について気のついた事はなかつたかね。またはひろ子と初江の顔について」
「さあ」
 私は一言こういうより外はなかつた。さきにもちよつと記した通り私がはじめて彼女を見た時ひろ子と初江がよく似ているということはすぐ気がついた。しかしさだ子はどこか父におもざしが似ていると感じたきりで別にそれ以上考えようはないのである。
「さてそれから彼等の供述だ。一体あの人たちのいう事はどこまで真実か判らぬところがあるが、一応ずつと思い出して見よう。あの夫婦が別室にねるのは不思議ではない。ただ問題は
前へ 次へ
全566ページ中121ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング