一家のようすを注意していたと思わなけりやならない。だから彼はその偶然のチャンスを決して見逃さなかつたのだろう」
「うん、それもたしかに一つの考えだ」
 藤枝はこういつたが、更にまたつづけた。
「ここで特に君の御注意を乞いたいのはその偶然のチャンスが家庭内の極めて家庭的のものだという点だよ。そうでない場合、たとえばさだ子がドライヴに出て自動車のアクシデントに出会つたとか、徳子が芝居見物の帰途を要されておそわれたとかいうのとは全く違つて、母が娘に家の中で、頭が痛いと云い、娘が又それに対して薬をのめと云つたということだ。このチャンスを利用出来るものは……」
 彼はここまでしやべるとふと口をつぐんで私を見た。
 何とも云えない戦慄が私の全身をおそつた。
「ねえ君、これを利用出来るものはどういう種類の人達だろう」
「うん」
 私はおもわず唸らざるを得なかつた。
「じやあ、やつぱり犯人は家庭内の人、すなわち家族か雇人だということになるのか」
「そうなりやいよいよおあつらえ通り『グリーン家の殺人事件』になるわけだね」
 彼はこういうと立ち上つて私の肩に手をおきながらささやいた。
「しかしね小川。そう
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