「おや小川、君は中々うまいことを云うね。僕もその考えはもつているんだよ。もしここにある人間がいて秋川駿三を苦しめようとすれば、その妻を殺しても又は娘を殺してもいいというわけになるからな。だから、結局こういうことになるんだ。犯人は、秋川家の家族の中誰でもいいから殺そうとしたか、あるいは妻を特に狙つたか、又は娘を狙つたかだよ」
藤枝は自分のふかすシガレットから上る煙をじつと見ていたが、ふとまた真面目な顔をしてつづけた。
「ただ一つ今度の事件で重要なところがある。それは、今度の殺人は一見全く偶然のチャンスに乗じたということだ。ねえ君、徳子が頭痛がするということは前からきまつていたわけではない。いわんやさだ子が自分の薬をすすめるということは決してその必然的の結果ではない。全くの思いつきだ。とすれば犯人はこのごく僅かな事件と時間を有効に利用したということになるのだ。
しかして一方、八月頃からの脅迫状のことを考えて見給え。あれだけのことをする奴は余程冷静に計画していたと思わなけりやならんよ。君はこの二つの事実をよく考えて見る必要があると思うね」
「しかし、遠大な計画をたてていた犯罪人は常に秋川
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