な事はあしたの解剖の結果を待たねばならないが、徳子が昇汞で死んだということはまちがいないらしい」
 私はこの時ふとある疑問を心に浮べた。

      7

「そうすると、一体犯人は誰を殺すつもりだつたのだろう」
 私は思わずこうきいた。
「さあ、そこだよ。犯人は一体徳子を殺すつもりだつたのだろうか、それとも他の人をやつつける気だつたのか、ということは確かに考えて見る必要があるよ。君もきいていた通り、検事はその辺を調べていた。西郷薬局では、あの薬はさだ子がのむと思つていたという。これはごく自然な話なのだ。そこで問題はこういうことになる。風邪薬が、西郷薬局から秋川邸に来るまでに昇汞に変じたか、あるいは秋川邸に来てから後、昇汞に変じたかということだ。もし、秋川邸に来るまでに代つたとすれば、犯人は一応さだ子のいのちを狙つたものとしなけりやならない。秋川邸へ来てから代つたものとしてもそう考えられぬことはない。
 しかしだ。若し秋川邸の中の誰かが、徳子がのむことを知つていたとすると別な考え方をしなけりやならなくなるわけさ」
「けれど、二人のうちどつちでもかまわぬという犯人があるかも知れないね」

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