に見ていたが、何も云わずに傍の重要書類を入れてある箱の中にこれをしまつた。
「ねえ、五月一日とはよかつたな、メーデーだね。馬鹿な事をするねえ。犯人というものは時々こんなことをするものだよ。これが彼、もしくは彼女の手落ちにならないことを僕は望むよ……あはははは」
 彼はこういうと、ふと机に向つて、紙をおいてしばらく何かしきりと書き込みはじめたのであつた。

      5

 私は実は気が気でなかつたのである。
 警察も無論活動を開始しているであろう。
 林田探偵もあの秋川家にふみとどまつて、その神の如き鋭い頭を働かしているであろう。
 だのにわが藤枝真太郎はこのオフィスで、一向あわてる様もなく何か悠々と机に向つて書いているではないか。
「おい君、いやに落ち着いているじやないか。そんな事をしていていいのかい。活動しないでも」
 私はたまりかねてとうとうこう云い出した。
「活動? 何をあてに君、動くつもりなんだい。僕らはあるふしぎな事実を知つている。然しはつきりした事実を少しも知らない。それを知らずに君どうして動けるものかね。まず充分ここを働かしてからにしようぜ」
 彼はこう云つて自分の額
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