のだろうか。
 しかし私にはその目的が全く判らなかつた。
 私がこんなことを考えているうちに、車は早くも藤枝のオフィスの前に止つた。
 オフィスにはいると、彼は先ず机の上に積まれてある手紙に目を通したがやがてその中の一通をとり出した。
「おい君、また妙な手紙が来ているぜ。三角印だよ。少々しつこすぎるじやないか」
 彼はこう云つてその内容を私に示した。
 文句は相変らず邦文タイプライターで、この手紙はちやんと切手がはつてあつて郵送されている。消印は麹町区。内容は、
「五月一日を警戒せよ」
 という九字であつた。
 私は藤枝の少しもあわてない態度に実はひそかに感心したのである。藤枝ばかりではない、さつき秋川邸でこの種の手紙を受け取つた際の、林田探偵も少しも顔色をかえなかつた。
 さすがに二人とも名探偵といわれるだけあると思つた。
 藤枝は、おもむろにポケットからさつき受け取つた手紙を取り出した。それから、昨日ここでひろ子宛に来たあの手紙をも取り出した。
 彼はこの三つを机の上に並べながら仔細に見比べていたが、やがて拡大鏡を取り出してレンズを通してしばらく見ていた。
 約十分間彼は何も云わず
前へ 次へ
全566ページ中110ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング