を指でさした。
「ねえ、僕は念の為に今までの事実をノートに記して見たのだ。これから君と二人でこの事実を考えて見ようじやないか」
おもむろに机の上から数葉のペーパーを手にとると、彼はその中から一枚のペーパーを取り出して私の前に腰かけるとおちついて語りはじめた。
「僕は今までの事件を二つにわけて見た。つまり大体の事実と、秋川一家の人々の供述とだ。まずはじめに、惨劇までという項目から事実をぬき出して見よう」
こういうと彼は、側においてあつた、とつておきのスリーキャッスルを一本つまみ上げ、ダンヒルライターを巧みに用いてそれに火をつけた。
「われわれは秋川駿三という人物の存在を知つている。この人の現在は興信録にある通りだ。三人の娘と一人の息子があり、宏壮な邸宅を山の手にもつている。信用録その他で見ると彼の資産は約八十万と云われ、それが不動産でなく大抵現金と有価証券とから成つていると云うから大したものだよ。ただ大切な事は、彼が一代にしてその富を成した、という事をわれわれは知つているが、如何にしてその巨富を作つたかということについては残念ながら僕らは今の所まつたく無智だ。この点をまず第一に心にと
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