林田英三の死顔を改めてあなたに御紹介するの光栄を有することを喜びます[#「稀世の天才犯人林田英三の死顔を改めてあなたに御紹介するの光栄を有することを喜びます」に傍点]」
藤枝の声は魔法のようにひびき渡つた。
いあわす人々、高橋警部をはじめ、ひろ子も笹田執事も刑事たちもしばらくポカンとして一言も発し得ない。
「私には何のことかさつぱり判らん」
やつと警部が一言云つた。
「今すぐ判るようになりますよ。ああ、さだ子さんはもう回復したでしよう。木沢さんがついておられる筈ですから一緒に行つて見ましよう。さだ子さんにきけばさし当り、今日の始末は判ります」
云わるるままに、一同はさだ子の寝室へとはいつた。
木沢氏の説でも、もうさだ子は全く回復して、訊問に堪えるということだつたのでわれわれはすぐに彼女の枕辺にあつまつた。
「あぶない所でした。しかしちようど間にあつて幸でした。御気分は」
「はあ、もう大抵」
「驚きはお察しします。何しろ林田が、いきなりとびかかるとはお思いにならなかつたでしようからね」
「はい、ほんとうにもうびつくり致しましたわ。ではあの方が……」
「そうです。お母さんをはじめ弟さん、妹さんを殺したのは皆あの男です。ただお父さんの死は全く別ですが」
さだ子は、今更おそろしさに身をふるわせたのであつた。
「ともかく、今日の始末をきかせていただきましようか」
はじめて、警部が口を出した。
「はい、今しがたでございます、林田さんが見えまして、警察のことで話があるとおつしやいますのです。私も伊達さんのことが気になりますし、林田先生(といいかけて)あの人を全く信じておりましたものですから自分の部屋にお通し申しました」
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「今から考えますと、林田さん(彼女はもはや先生とは云わない)の顔色がいつもとは大変違つていたように思われます。テーブルを隔てて腰かけ、女中がお紅茶を二つもつて来て、ドアから出て行つてしまいますと、林田さんは、形を改めて、今日は大変秘密なことを話したいと云い出しました。そうして、ふと、ドアの外のようすをうかがつていられるようでしたが、私に『誰か外にいるのじやないかしら。もしや姉さんが立ち聞きしてはいないかしら』と心配そうにいわれました」
「彼は腰かけたままでしたか」と藤枝がきく。
「はあ、それで私が念の為に、立つてドアをあけましたが
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