らざる口論をしていて、いつになつたら真犯人を捕える気なのだろう。
 われわれは林田の家を出るとすぐ別れた。
 これで五月二日の事件は終つた。

      6

 五月三日の朝早く私は藤枝にねこみをおそわれた。と云つてもこの朝、私はめずらしくね坊をしたのでおきて見ると七時だつた。
「おい、これからもう一度林田を訪問するんだ。君一緒に来いよ」
 藤枝[#「藤枝」は底本では「林田」]はただならず興奮している。
「何だ。また議論かい。昨日の議論のつづきかい。ノンセンスだ。いや断じてノンセンスではない! のおさらいかい」
「馬鹿なことを云わずに早く出て来たまえ。さつきから林田の家に電話をかけているんだがどうしても向うが出ないんだ。秋川の家にでも行つてるかと思つて今かけたが、そつちにもいないらしい。ともかく一緒に来い」
「だつて留守じや……」
「留守だか何だか判らないんだよ、電話に家人が出ないというだけなんだ。さあさあ、さつさと出かけるんだ」
 何のことやらわけが判らないがむやみと藤枝がせき立てるので私も手早く支度をしてタクシーをよびすぐに林田の家へといそいだ。
 田舎まる出しの女中が出たが、主人はちよつとまえに出かけたということ、電話は書斎の方につなぎつぱなしになつているが一向ベルがならなかつた、というようなことを語つた。
 藤枝はこれをきくと、すぐ林田の家を出たが、あわてて流して来た円タクをよびとめて秋川邸へといそがせた。
「奴、受話器をはずしつぱなしにして出やがつたな」
 彼は車中でたつた一言こう言つた切り、何も云わない。
 秋川邸につくとすぐ笹田執事が出て来た。
「林田君が来たでしよう」
「はい、ちよつと前に見えました」
「どこにいます」
「お二階のさだ子様のお部屋に……」
「何、二階のさだ子さんの部屋?」
 彼はこういうと、紐をほどきにかかつていた靴をぬごうともせず、そのまま中にとび上るといきなり私の腕をつかみながら驚く笹田執事をつきのけてまつしぐらに階段をかけ上つた。
 さだ子の部屋の前まで行くと、藤枝はノックもしないでドアのハンドルに手をかけて開けようとしたが、鍵がかかつているのか、ビクともしない。
 瞬間、藤枝の顔にサット不安の色が漲《みなぎ》つた。その途端中からさだ子とおぼしき叫び声がきこえて来た。
「あれえ、誰か、誰か来て」
 つづいて部屋の中で取組合でも
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