が判らないんだ。しかしね林田君、今度こそ僕はあの事件の真相を捕えることができたと思うのだがね。君にはどうだい、多少はあてがついたかい」
「つかぬこともないさ」
「かつて君に云つた通り、今やわれわれは同盟するか、争うかだ。いずれにしても僕は自分の手にあるトランプを君に示す方がいいと思う。ね、君、ききたまえ。僕は秋川殺人事件の原因をまずはつきりとつかんだよ。
4
「犯人の殺人の動機が何であろうとも、今まで展開された事実でわれわれはもつと早く犯人を名指すことができた筈だつたのだ。それに気がつかなかつたのは、全く僕の力が足りなかつたのだが、今や僕は犯人のあの恐ろしい犯罪の動機を知り得たのだよ」
勝ち誇つたように藤枝は競争者林田英三の前に胸を突き出して云い切つたのである。
「うん、御同様だ。この僕にもその動機ははつきり判つている」
案外にも林田は少しもおどろかずに答えた。
藤枝は、これを見て何と思つたかいささかあわて気味にたずねた。
「では君もまたあの殺人の動機を知つているのか」
「うん、やはりそれを知つたのは最近のことだが……そうだ、ちようど君がどこかに旅行している時……あの頃になつてやつと判つた」
「ではきく、僕も云うから君も云つて見たまえ。秋川一家に対する犯人の呪いは……」
「遠き過去に因縁話をもつ宿命的な呪いだよ[#「遠き過去に因縁話をもつ宿命的な呪いだよ」に傍点]。そのはじめは姦通劇さ」
林田はズバリと云つて藤枝の顔を見た。
藤枝はしばらくあつけにとられたように林田の顔を見詰めた。
「そうか。君も知つていたのか。その通り、姦通劇にもとを発した恐るべき呪いだ。犯人はその呪いから秋川一家に烈しい復讐を試みたのだ」
「犯人はしかも極めて頭がよく働いた。藤枝君、われわれが出会つた人間の中で今度の犯人位悪魔のような働きのある奴に出くわしたことはない」
「その点は僕も同感だ。全く! しかしだ。かの悪魔の如き天才にもかかわらず、犯人はスタートからして全く錯誤に陷つているのだ[#「犯人はスタートからして全く錯誤に陷つているのだ」に傍点]。林田君、君にはその点に気がついているのかい」
藤枝と林田は今や心の中で鎬《しのぎ》を削つているのだろう。二人は殆どにらみ合わんばかりである。今度は林田が驚愕の色を表わした。
藤枝はどうだ、判つたか、というような調子でた
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