んだ。そうすれば母を殺すことは一石二鳥だからね」
「成程、説明というものはどうにでもつくものだね。……第二のあのタイプライターの脅迫状ね、あれをひろ子が勝手に作つたとするのは妙じやないか。おまけに父があんなに何かを恐れているのだぜ。して見れば、駿三に脅迫状を送つた人間はたしかに駿三の秘密を知つていたと見なければならぬし、駿三には立派な秘密があつたと思わなければならんじやないか」

      6

 私は夢中になつてひろ子を弁護しはじめた。
「警部の論理に従えば、ひろ子がさつき直観と云つた奴が、実はひろ子が探り出した父の秘密だというのだ。ひろ子は如何したかしらぬが何かの方法でもつて父の秘密を知つた。そこで自分であらかじめ脅迫状を出したというんだがね」
「そうすると何かい。ひろ子は犯人が外部に在りと思わせたかつたのかい」
「警部はまあそうと思うんだろうね」
「それじや矛盾じやないか。警部の論理によれば、ひろ子はさだ子と伊達を疑わせようとしているというのぢやないか。それなのに彼女が、犯人外部に在りというようなトリックをしたというのは!」
 私は鬼の首でもとつたようにこの自分ながらすばらしいと思われるロジックにかじりついた。
 藤枝は何と思つたか、にやにやしながら、
「警部の説に従えば……」
「オイ、又しても警部の説に従えばかい。一体君自身はどう思つてるんだい」
「まあそう興奮し給うな」
「いや興奮せずにはいられない。そんなインチキ論理でひろ子を疑うなんて」
「あははは。インチキ論理はよかつたな。警部の論理に従えば、そこがひろ子の腕のあるところだというわけさ」
「どこがだ」
「つまり一応外部にありと見せて、だんだん探つて行くとさだ子と伊達に嫌疑がかかるという寸法」
「だつておかしいじやないか」
「僕の論理に従えば、この点は実に君のロジックに賛成なんだよ。仮りにひろ子が犯人だとしても、脅迫状は他の人から送られたと見るのが正しい。今月の十八日の日に君に僕はたしかに云つた筈だ。脅迫状が来てから殺人が行われる。この場合、脅迫状をよこした奴を殺人犯人と見るのは一応常識だ。しかしそりや絶対にまちがいないとは云えない、とね。そうすれば、わがひろ子嬢は、誰とも知れない人の脅迫状を、巧みに利用した事になる。いいチャンスをつかんだ事になる。ねえ小川、君は鬼の首でもとつたように論じるが、ひろ子
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