に帰つて行つた。
「実はね」
こう云つたが、苦しそうに彼はゴホンゴホンと二つ三つ咳をしながらつづけた。
「昨夜熱でよく眠れないんで、例の事件をいろいろに考えて見たよ」
「うん、うん」
「事件は依然として謎だ。いろいろに考えられる。警察の方も余りはかどつていないらしい。そこで僕は、ある考え方を進めて見たんだ。その結果、僕は三つの大切な結論に達した。昨日君に頼んだ事と少し変つてくるからよくきいてくれ。もし、将来、警戒すべき事件が起るとすればだ[#「もし、将来、警戒すべき事件が起るとすればだ」に傍点]。第一[#「第一」に傍点]、一番危険な場所は秋川邸内だ[#「一番危険な場所は秋川邸内だ」に傍点]。従つてその家族を保護するには、彼らを家から外に出す工夫をしなければならぬ。第二[#「第二」に傍点]、昨日は君にひろ子とさだ子に注意してくれと頼んだが、これを今改める。君は、将来、あの家族は勿論、あの家にいる者、来る者全部の行動に注意してくれ給え[#「あの家にいる者、来る者全部の行動に注意してくれ給え」に傍点]。たとえそれが警官であろうと医師であろうと同じ事だ。勿論君一人でこれら全部を一眸の中におさめる事は不可能だろうし、君があの家にいない時にはどうする事も出来ないわけだが、ともかく、それだけの事を心においてくれ給え。第三に、伊達正男が警察にとめられている限り、将来の事件は多分おこらない[#「第三に、伊達正男が警察にとめられている限り、将来の事件は多分おこらない」に傍点]。しかし昨夜きけば、もう帰されたそうだから充分気をつけて……」
「じや君はやはり伊達正男を……?」
「いや、今は何もきかないでくれ給え。今いつた三つの事だけを充分注意していてくれないか」
私は少々呆れて彼の顔を見つめた。
「ところで早速今いつた重大な点の第一の応用問題だが、今日は君、秋川邸へ行つたら、誰でもいいからできるだけあの家の人をつれて、芝居でも活動へでも出かけ給え。できるだけ長く外にいるんだよ」
「しかし僕一人で、そう一人以上の保護はできないよ。何か外で起つた場合は」
「その危険は断じてない。荒唐無稽な探偵小説か何かでなければ自動車でさらわれたりなんか決してないよ。殊に今度のようなえらい犯人がそんな事をするものかね」
5
「でも……僕一人で大丈夫かな」
「大丈夫だ。秋川邸の外に出ている限
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