り、おそらく君が附いていないでも大丈夫だと思う」
「じや、君の指図に従うとするが……すると秋川邸内の方は僕は一日留守にするから何も判らないよ」
「無論それは仕方がない」
「では失敬」
 私はよく判らぬけれども、藤枝の命令に従つて、ともかく秋川家の令嬢を連れ出すべく、邸にいそいだ。
 私が同家に着いた時は、未だ林田も木沢医師も来ていなかつた。知り合いになつた関係上、やはりひろ子をたずねるのが自然なので、笹田執事にその旨を頼むと、ひろ子がすぐ出て来てくれた。
 自分の部屋に来てくれという事だつたので私も余程それに応じて行こうかと思つたのだが、藤枝か林田ならばともかく、私は藤枝の代理とはいうものの事件に対する観察力などというものはまるでないのだし、云わばひろ子達のお相手役なのだから、一人でひろ子の部屋で差し向いになるのはちよつと礼を失するように思われる。
 それで応接間で話すことにした。
「あの、藤枝先生は如何でございますの」
「あいかわらずですよ。まだ熱があつて床についています」
「まあ、いけませんことね。生憎な時に」
 ひろ子はうれわしげな表情をした。
「お父様の御様子は如何です」
「ありがとうございます。もう大分よろしいので。けさからおきておりますの。午後になつたら、部屋から出て庭ぐらいあるいてもいいだろうということでございます。先生方にもお目にかかつてお礼申し上げると申しております」
「じや、ずつと御機嫌はいいんですな」
「ええ、そりやもう……」
「ねえ、ひろ子さん、突然ですが、今日どこかに出かけて見ませんか」
 さすがにひろ子はちよつとおどろいたらしい。
「これは藤枝がいうんですよ。私に是非あなた方に申してくれということだつたんです。ああいういろんないやな事があつた後だから、こうやつてうちにばかりひつこんでいらしつてはいけない。ますます気がめいる[#「めいる」に傍点]ばかりだから、少し陽気に外に出かけなすつた方がいいだろうというのですよ。無論あなたお一人でなく、出来るなら、さだ子さんも初江さんも御一緒にね」
「藤枝先生がそうおつしやつて下さつたのでございますの」
「ええ、だから出かけようじやありませんか。尤もこれが普通だとお母さんがなくなられ、弟さんも死なれた直ぐ後で、むやみに外に出歩くというのはいけないかも知れませんが……何分、藤枝が、あとの方のために出来るだ
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