たと信ぜられる。
ところが、その結果彼は逮捕されると、
「ああ、とうとうマルテの件がばれたか」
と自白同様の一言を発してしまった。
一人の証人は、一月三十一日午後二時頃、彼の従来の申立によれば此の時彼はマルテとバタクランに行っていた筈なのだが、その時ソレイランが自分の室の窓の所に、マルテと一所に居た、という事を証言した。於是《ここにおいて》、彼に対する嫌疑はいよいよ深くなり、さんざん言いこまれた末、とうとう彼もまま真実に近い自白をはじめた。
即ち、彼はあの日自分の所に一旦マルテをつれて行ったのだが妻がいなかった。マルテはソレイランの妻と一所でなくてはコンセールに行かないと頑張って泣き出したので、無意識に[#「無意識に」に傍点]咽喉を手で押えると、いつの間にかマルテの息は絶えていた、というのだ。
そこで、布で死体を包み、電車で東停車場まで運び、そこの手荷物預りの所に之を荷物として託したのであった。
此の自白を確実にする為に、当局は直に東停車場の荷物を取調べたが、はたしてそこには、マルテ・エルベルディングの死体を包んだ灰色の包みが発見された。
二日の後に、解剖が行われたがその
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